徳安 彰氏に送った手紙  1.はじめに(文化祭の現状)  お忙しい所、突然で失礼します。私は先輩の母校附設高校で現在文化委員長を務める 者です。大津留先生に現代文を教わっているのですが、その授業中に「文化祭について」 という先輩の論文を拝見し、痛く感激致しました。特に、「我々がやろうとする文化祭 は、我々の情熱がみごとな理性によって統一され、止揚されるものだと思うのです。」 という一文は、私が目指す文化祭のカタチを端的に表しています。そんな理想的な文化 祭を目指す者として、文化祭創成期の文化副委員長である先輩にご指導を頂きたく、筆 をとりました。  例年同様、今年も4/29(本校)、4/30(市民会館)の二日間に渡って文化祭は行 われました。私も二年生ながら文化副委員長として文化祭に携わりました。(実際は役 職とは裏腹に先輩方の使い走りをしていたのですが・・・。)半年前から少しずつ準備 を始め、他の時間を割いてまで働いた文化祭が終わった時、私は確かな感動を覚えまし た。これ以上の文化祭はないと。しかし、やがて望みどおり文化委員長のポストを与え られ、他の人の意見も交えながら、前回の文化祭を客観的に振り返ると、結局自己満足 に終わっただけなのではないかという疑問が生じました。  一番ショックを受けたのは、文化祭を見に来てくれた友達の「大濠高校の文化祭の方 が、外部に開放的で面白かった。」という言葉でした。確かに、我が校はバザー(飲食 店等)24店、展示13店とバザー過多の傾向にあり、”見せる”要素や来客とのコミ ュニケーションをとる機会に乏しいのが現状です。焼き鳥を扱う店が5店、焼きそばを 扱う店が3店等同じような個性のない店が蔓延しています。ただ、展示は13店と少な いながらも、中身が充実したものもあり、外部とのコミュニケーションという要素を除 けば、まずまずという所です。中には、現展示委員長藤井君が企画した「性格診断」 (渡されたシートの質問に答えることで、自分の性格の傾向を知ることが出来る)とい う展示は、外部からの評価も高く、来客の方にも大いに喜ばれました。これこそ、外部 とのコミュニケーションを図るという点で、展示のあるべき姿だと思います。写真を展 示したり、研究発表をするだけではなく、担当の者が案内し説明するという要素が加わ らなければ、”見せる”ことにはなりません。さらに、コミュニケーションも存在しま せん。  他校と比較して、本校は展示が少ない傾向にあります。大きな原因は、文化部が非常 に少ないことです。つまり、多くの生徒は文化祭=文化部の研究発表の場という概念を 持ち合わせていません。もちろん、それが全てではありません。しかし、徳安先輩の代 で形作られて、約二十五年文化祭がマンネリズムの中で、ただのお祭り騒ぎにならない ためにも、もう一度文化祭を見直す必要があると思われます。企画部の会議でも、「文 化祭なんて、なくてもいいよね。」という声が聞こえ、文化委員長として非常に失望し たこともあります。ほんの少数派の声だったのですが・・・。ここで「何のために文化 祭は存在し、なぜ我々は文化祭をするのか?そして、どういう文化祭を作るべきか?」 という問いかけは必要に迫られているようです。  2.展示について  文化祭がただの祭に終わらないためにも、展示部門の充実は当面の問題です。ただ、 どんな展示が理想的なのかは意見が分かれるところです。恒例となっている保健委員会 展示は、高度な研究発表を売り物としています。今年は”いじめ”に関して発表し、新 聞に取り上げられるほどの評価を受けました。しかし、残念なことに内容が高尚であれ ばあるほど、外来者は入りづらいという一面を持つようです。来客の興味を引く工夫が 必要です。  一方で、前述の「性格診断」は朝から人出が絶えませんでした。男子校であるため、 外来客も女性がほとんどです。彼女達にも楽しむ権利はあります。だから、私は今年は 「性格診断」のような展示を増やそうと考えています。この考えについて、先輩はどう お考えでしょうか。また、本校の文化祭は一クラス一店というような形式をとってない ため、私たちが求める展示が、内部から出てこない恐れがあります。よりよい展示を作 るため私たちもそう言う強制力を働かせるべきなのでしょうか。企画部では、展示担当 の者で勧誘を試みる予定です。先輩方の頃は、自主的に展示は出されていたのですか。 また、どういう展示があったのかをお聞かせ下さい。 3.バザーについて  本校のバザー(飲食店)は、超高校級と言っても過言ではないでしょう。他校では考 えられない程、出店しています。バザーは文化祭を盛り上げる要素ではあります。ただ、 前述の通り似たような店が多いのには、問題があります。また、過剰気味ということを 考えると、ある程度の規制を加える必要があると思います。バザー委員長は一店一店審 査し、指導するとはりきっていますが、私には本校の特徴であるよい意味での自由奔放 が損なわれるのではと不安もあります。しかし、バザーの質の向上を考慮すると、当然 の動きです。先輩の意見をお聞かせ下さい。 4.一人一役について  現在、本校で行われる一日目は自由参加の形をとっています。バザー・展示にしろラ イブにしろ、その他イベントには、自分の意志で参加します。他校のようにクラスごと の店はないので、当日何もする事がなく、まるで他校の生徒のように客としてまわる者 もいます。文化祭を企画する者としては、客として回るのは他校の文化祭でもできるの で、せめて自分の学校ではホストとして参加してほしいというのが本音です。しかし、 そこに強制力を働かす事はお互いのために良くない。だから、いくつかのイベントを用 意して、仕事のない人はそれらに参加してもらおうと考えています。例えば、200〜300 人参加のクイズ選手権(高校生クイズののりで)大相撲附設場所、筋肉番付など・・・。 良い案だと思いますが、どうでしょうか? 5.テーマについて  「執行部のみで見解を打ち出し、それで統一できればよいのですが、特に我が校のよ うに個人の主張は強いところではそうはいきません。統一はどうしても一部の意見を割 愛し、どこかに摩擦が起こらざるを得ません。」という先輩の言葉を私は痛切に受けと めています。一学期に大規模に募集したのですが、実行委員でさえ提出しない者もいて、 テーマ案に関しては失望させられました。確かに、自分がいざ考えるとなると、思うよ うにいきません。しかし、少しでも気に入らなければ他人の出したテーマ案に反発した くなると言うのが、原因でしょう。過去のテーマを見て、私が最も気に入ったのが、「一 祭合才〜すべてが響き合う〜」という一昨年のテーマです。このテーマを越えるものを 考えようと頑張ったのですが・・・。私が考えたテーマ案はどうでしょうか?  「維新前進〜才は投げられた〜」   維新…全てが改まり新しくなること   前進…ものの程度や進歩の度合いを進めること  文化祭も今回で28回目を迎えました。附設の文化祭も確立はしたものの、伝統・形 式のとらわれてマンネリズムに陥っている気がします。私たちは、前年を踏襲した文化 祭を行うのではなく、今こそ「男く祭」に維新を起こす確固で動くときが来たのではな いでしょうか。そして、附設生の才能を結集し、決断のもと実行に移す。今、才(賽) は投げられた。以心伝心からもじりました。  「千祭一偶〜catch the best chance〜」   千載一遇…千年に一度しかあえないほどの得難い機会。  またとない機会を活かして、我々の情熱をぶつけよう。  他にもいろいろ考えたのですが、良いと思われるのはこの二つです。前者は数人の賛 成は得られたのですが、「維新」と言うのが古めかしいという意見がありました。どう しても賛成できない人もいます。後者は最近考えたので未発表です。先輩はこの二つに どういう印象を持ちますか?10/28(火)の定例会で、今まで話し合ってきた内容をまとめ、 「今年のテーマ・方針」を発表することになっています。 6.中学生の文化祭参加について  最近、附設中学生徒会の方で文化祭をしようという動きがあったようです。結局、保 留になったようですが、その度で中学も高校の文化祭に参加してはどうかという意見が 出たという報告を受けました。私個人としては、中学生が文化祭を行うこと自体、同意 できません。文化祭をしようという積極的姿勢は評価できますが、体育大会も教師主導 で行う生徒会では、生徒の自主性が重要な要素を占める文化祭では到底無理でしょう。 中1、2はどうしても教師の指導のもと行わざるを得ません。それでは、文化祭をする 意味は失われてしまいます。中学生だけでは無理だから高校生に混ぜてもらおうと言う の問題があります。中学生と高校生では精神的にも大きな隔たりがあります。私たちが 目指す「情熱と理性の止揚」といったものをふまえたバザー・展示ができるのか。私達 も手探りの状態なのに・・・。ただの「お祭り騒ぎ」では困るのです。だから、中学生 は文化祭をする側ではなく、見る側として参加して、高校生になって「自分のやりたい こと」を文化祭にぶつけて欲しいと思います。先輩はどうお考えでしょうか? 7.「情熱と理性の止揚」について  前章でえらそうなことを書きましたが、正直私たちには難問です。附設性の盛り上が りは期待できますが、理性という要素はたいへん難しい問題です。例えば、生徒会恒例 のゲイバーやフィーリングカップル等は理性が働いていると言うほど崇高なものなの か?ただ、それらがなくなるのも寂しい気がします。理性を凝り固まった文芸のような ものと考えれば、非常につまらない文化祭になってしまいます。私は「文化祭に来た客 をどう喜ばし、どのようにコミュニケーションをとるのか」と思索することを「理性」 と考えます。つまり、文化祭とは「本校生の熱い情熱で築かれたもので外部の方に楽し んでもらい、交流を持ち、その過程で個人が何かを得るもの」と思います。それをふま えた3つの方針を打ち出しました。   ・バザーの質の向上を目指し、昨年なかったゲームバザー(射的・ヨーヨー釣    り)の店をつくる。   ・展示・イベントの数を増やして、来客の方が本校生徒と触れ合い楽しめる空    間を作る。   ・よい意味で、過去の伝統・形式にとらわれない。  私は先輩の言葉をこのように解釈しましたが、どうでしょうか。 8.最後に  定例会プリント(第1回〜第4回)と過去二年分の文化祭のパンフを別便にて送付い たします。ご意見をお聞かせ下さい。ちなみに前回(97年度)のパンフは高い評価を得 ました。