第28回男く祭記念文集 [ 目次 | 前のページ | 次のページ ]

私の創作活動について

  池辺 教

 私は、昭和28年に医学の道を志すつもりで、附設高校に入学させて戴きました。当時の板垣校長先生を始め諸先生方の県立高校等では得られない次元と格調の高い講義や講話、それにクラブ活動も部はなく何をしても構わない自由な雰囲気が私の性に合い、すっかり気に入っておりました。が、筑後川上流域での豪雨が、未曾有の大水害を下流域に引き起こしました。水浸した久留米大学医学部の後片付けの手伝いに派遣されたのがもとで、医学の道に志す気力をすっかり失い、後に結局絵の道を選ぶ事になってしまいました。

 しかし絵の道に入っても附設高校での貴重な体験がなかったら、恐らく女性や花を描く様な道を歩んでいたのかもしれません。

 それでは、現在の制作のコンセプトと作品を少し紹介させて戴きます。

 富士通の機関誌「飛翔」の創刊特別号に「現代物理学は物質の究極の姿クォークから150億光年の広がりをもつ宇宙像までを開示した、池辺 教氏の作品"The
Quark"は素粒子の崩壊の軌跡と天文写真を用いて無限の未来へとつながる世界観を視覚化したものである」と紹介されております。 

 また私は次の様な視点から美を捉え制作しております。

 今世紀末から二十一世紀にかけて、時代は激しく動きつつあります。情報の分野に於けるマルチメデイア化、超伝導の様々な分野に於ける実用化、量子素子の開発・核融合炉の開発の成功等は、十八世紀に始まる産業革命にも比すべき、構造・意識の変革をもたらしつつあります。

 これは単に産業界のみに留まらず、あらゆる分野にパラダイムのシフトを余儀なくさせて来るものと思われます。又生物の分野に於ける、DNAの仕組みの解明が「人間の精神現象等を含めて、生命現象はすべて物質レベルで説明がつけられる時代の到来」が同じ様な状況を生み出して来るものと思われます。

 宗教・哲学・芸術の分野に於ても例外ではないようです。

"宇宙は相互に関連し、作用し合い、なおかつ不断に変化する不可分な部分からなる一つのシステムであり、そして観察者は不可分な部分としてそこに内包される"この一文に見られる様な極微の世界に於ける宇宙の振る舞い、更なる「非局所場」の論理は一見あい対する様に見える科学と宗教・哲学を融合・統一する時代を予感させてくれます。この様な時代に於ける美の一つの在り方を示唆する様な制作を意図しております。

宇宙の振る舞い「ザ・クォーク」(The Quark)
宇宙の振る舞い「ザ・クォーク」(The Quark)
(2×6m, アクリルキャンバス)
ニューヨーク州立美術館蔵


宇宙の振る舞い「ザ・クォーク(陽子の内部構造)」
宇宙の振る舞い「ザ・クォーク(陽子の内部構造)」
(3×7.5m, ギリシャ産白大理石)
化血研菊池研究所玄関壁画


宇宙の振る舞い「ザ・クォーク(陽子の内部構造)」
宇宙の振る舞い「ザ・クォーク(陽子の内部構造)」
(181×260cm, アクリルキャンバス)
作者蔵


宇宙の振る舞い「グサイ粒子の生成と崩壊」
宇宙の振る舞い「グサイ粒子の生成と崩壊」
(18×23cm, 版画)
コレクションズ・ニューヨーク州立美術館蔵
京都国立近代美術館蔵
国立国際美術館蔵
第20期囲碁名人 武宮正樹氏蔵
デザイナー コシノ・ジュンコ女史蔵

池辺 教

福岡県久留米市出身 昭和12年8月22日生まれ
昭和30年頃より創作活動に入り同40年頃より数学者の長兄の影響で現在の作風「現代の曼荼羅としての実証的な宇宙観(世界観)の視覚化」に挑み作品はニューヨーク近代美術館(エバソン)、東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、東京都美術館、国立国際美術館などに収蔵。

第28回男く祭記念文集 [ 目次 | 前のページ | 次のページ ]

Copyright (c) 1998, 池辺 教, 第28回男く祭記念文集制作委員会, All rights reserved.